彩雲国物語  第二期  第36話 「人生いたる所に青山あり」

「人生いたる所に青山あり」:元ネタは
『人間到処有青山』:「じんかん いたるところ せいざんあり」

幕末の僧、釈月性の詩『將東遊題壁』です。

男兒立志出郷關  男児志を立て郷関を出ず  
學若無成不復還  学もし成らずんば、また還らず 
埋骨何期墳墓地  埋骨、いずくんぞ墳墓の地を期せん
人間到処有青山  人間到る処青山あり  

將東遊題壁:東の方に旅立とうとして、壁に詩を書いた。
男兒立志出郷關:男が志を立てて、故郷を出立したからには 
學若無成不復還:学問が、もし成就出来無ければ、二度とは帰ってこない。
埋骨何期墳墓地:骨を埋めるのは、どうして故郷の地であることを望もうか。
人間到處有靑山:人間には、いたるところに墓所とすべき青山があるのだ。 

しかし、これも蘇軾の詩が元ネタになっています。
蘇軾の詩「是処青山可埋骨」の全文を示しましょう。
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 聖主如天 万物春   聖主は天の如く、万物、春なるに
 小臣愚暗 自亡身   小臣は愚暗にして、自ら身を亡ぼす
 百年未満 先償債   百年、未だ満たず 先ず債を償い
 十口無帰 更累人   十口 帰する無く 更に人を累せん
 是処青山 可埋骨   是の処 青山 骨を埋むべし
 他年夜雨 独傷神   他年 夜雨 独り神を 傷ましめん
 与君世世 為兄弟   君と世世 兄弟となり
 又結来生 未了因   また結ばん 来生 未了の因を

蘇軾は北宋における最高の詩人とされ、その詩は『蘇東坡全集』に纏め
られています。

蘇軾は南支那の四川が生んだ、東洋を代表する詩人です。
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支那には古来南北の区別、つまりこの蘇軾を産んだ南支那と北支那の区別が
あって、風俗・人情・地味・物産等百般に渉って、顕著な相違を有しています。

支那の古代に於て、純支那人たる漢族の根拠地は、黄河流域の北支那に
限ったものでした。
彼等はその根拠地を中原とか中夏とか、又は華夏とか誇称しましたが、
これは今の河南省を中心とした北支那の異名に過ぎません。
長江沿岸の南支那は、蛮夷の域として蔑まれていました。

春秋戦国にかけて約500年間は、支那の文化の絢爛を極めた時代ですが、
その時代に出た文武の大人物を見渡すと、皆北支那の出身で、南支那人は
殆ど見あたりません。
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例えば

儒家の孔子・子思・孟子・荀子
道家の老子・列子・莊子
兵家の孫子・呉子
縦横家の蘇秦・張儀

その他
管仲、墨子、楊朱、韓非子

も、皆北支那の人でした。
南支那には之に比肩すべき大人物を見出し難い状態です。

秦の始皇帝や、西漢の武帝が、南方経営に力を入れて、この方面に漢族の移住
する者が増加すると共に、南支那の風気は幾分開発されますが、東漢の諺にも、

関西出将、関東出相  〔後漢書虞翻伝〕

とあるとおり、文武の大人物はみな函谷関(河南省)の東西に当たる北支那
から出ていました。

漢と西域(中央アジア)との交通を開いて、その功績は新大陸発見のコロン
ブスにも比較される張騫⇒漢中(陝西省)
支那史の代表、司馬遷⇒龍門(陝西省)
訓詁学の大家の鄭玄⇒北海(山東省)
三国志演義で有名な諸葛亮(孔明)⇒瑯邪(山東省)

いづれも北支那に属します。
西漢、東漢、三国時代を通じて、文化が依然北支那に存したことは、否定でき
ません。

しかし4世紀、匈奴、鮮卑、氐、羯、羌等の所謂五胡が、北支那を占領して、
漢族の建てた西晋は、洛陽(河南省)、長安(陝西省)の都を奪われ、長江の
南の建康(江蘇省)に都を移して、東南半璧の天地に東晋を建設することとな
ります。
所謂『晉室の南渡』です。

こうして古来漢族の根拠地で、同時に文化の中心であった北支那が、三百年間、
騎馬民族に占領されます。

さて南支那はこの三百年の間、終始漢族の天子を戴きます。
晋の南渡と共に、貴顕・大官・名族が、騎馬民族の支配を避けて、南支那に移
住したことが、漢族特有の文化を伝え、南方開発に多大の貢献をなします。
そしてこの期間に於ける人物は、却って多く南方から輩出しています。

書道の神:王羲之
画家の聖:顧愷之

は、皆南支那出身です。

つまり南方の文化が北方を凌駕し、また南方の人物が北方のそれに凌駕せんと
する勢いになりました。
これは晋の南渡以来の新現象でした。

さて隋唐時代に南支那の風気は一層開発されましたが、その中心は南支那の北部、
即ち今の江蘇・安徽・浙江方面に限ったことで、南支那の南部にある、今の湖南
や江西の南部、また福建・広東方面は、唐時代に於ても、その文化後進地帯であ
りました。
福建地方で古来より勢力を有する、林・黄・陳・鄭の所謂四姓も、晋の南渡の頃
に、北支那からここに移住して、高度な文化を伝えたといいます。しかし唐の中
葉の頃まで、この地方の人物で科挙を通過したものが、極めて少ないのを見ると、
言わずもがな。
さらに広東・広西方面は一層未開でした。

漢代から六朝そして唐代にかけて、嶺南地方は政治犯罪者の流刑地でした。
韓愈は唐の憲宗の佛骨を迎えるのを諫めて罪を得、819年に潮州に流されました。
潮州は今の広東省潮州市にあたります。
柳子厚も亦、王叔文の仲間として咎を受け、憲宗の時805年に永州(湖南省)の司
馬に左遷され、ついで815年に柳州(広西省)の刺史に移されました。
このように政治犯罪者が流刑されて、落南の人士として定住し、福建・両広方面の
文運も、段々開けていきました。
中世のオーアト極小期(Oort Minimum)、宋の南渡が起ります。
宋の南渡と共に、北支那の名門・名族が江南に移住したことは、東晉時代と同様で
す。

韓世忠(陝西省)
岳飛(河南省)
張浚(甘肅省)

など、南宋の初期に活躍した人を見渡しても、北支那から南移した者が多数でした。
やがて南宋により福建地方の開発が進みます。
唐の中世まで人文未開の域であつた福建が、南宋時代になると、道学者の淵藪とな
っていきます。
朱子は安徽出身ではありますが、主として福建で修業をしました。
故に当時朱子の学派を指して閩学と称しました。
当時の人が、福建地方を指して、古の鄒(孟子の生地)魯(孔子の生地)又は古の
中原に比したのは無理もありません。
福建に隣接する嶺南地方の文化が、之が為に多大の影響を受けたことは勿論です。
唐以後の北支那は、遼・金・元、そして明一代を除いて又清という風に、絶えず騎
馬民族の侵攻や蹂躙によって、伝統の文物が影響を受けたのに対し、南支那は比較
的に此等の災厄を避けることができたので、その学術・文芸を保存長成することが
できました。
南宋以降、朱子を始め、

南宋の陸象山(江西省)
明の王陽明(浙江省)

など、大思想家は皆南支那の出身です。
清の思想・学術に甚大なる影響を与えた

顧炎武(江蘇省)
黄宗羲(浙江省)
王船山(湖南省)

などの先覚者も、亦同様すべて南支那に属します。
公羊学の流行は、支那近代学界の一特徴ですが、この公羊学の開拓に功労ある学者は、

荘述祖(江蘇省)
龔自珍(浙江省)

など南支那人が多数です。

先秦から両漢時代にかけて、繁華な大都市といえば、北支那に限ったもので、長安や
洛陽はもとより邯鄲(直隷省)、大梁(河南省)等がありましたが、南方の開発と共
に、揚州(江蘇省)、建康(江蘇省)、杭州(浙江省)、蘇州(江蘇省)等、南支那
の大都市の繁華が、次第に北方のそれを凌駕するに至ります。

物力に関しても、『書経』の禹貢を見ますと、支那古代の田地を、上の上より下の下
に至る九等に区別していますが、北支那の田畠は、上等又は中等を占め、南支那の田
畠は、下の下とか下の中という劣等に位しています。
このように古代に於ける、南支那の農業は言うに足らざる有様でしたが、南方の開発
によって、その農耕も進み、隋唐以後は、南支那が米穀の主産地として、北支那は却
ってその供給を受けなければならぬこととなりました。

南支那の開発は、秦漢時代からその緒につき、晉の南渡によって、急にその度を進め、
唐・宋・元・明とさらに開発を進めて、遂に南方は文化・戸口・物力すべての点に於
て、北方を凌駕することになりました。
この南支那の開発の原因は、北支那には絶えず北方異民族の侵入があり、之と共に優
秀なる北方の住民が、次第に南支那に移転したことが長く繰り返された結果でした。

さて…、
前回予告で出てきた大熊猫:パンダと劉輝。
パンダと関係なく、今回は劉輝の回想メインのお話。

回想の中で懐かしいキャラが出てきましたねぇ。
杜影月、香鈴と仲良くやってるのでしょうか?
紅黎深、何話ぶりの登場?
チラッと映った黄奇人、次に喋るのは果たして何話後なのでしょうか?

邵可は何処へ?
劉輝のそばに現れた3匹のパンダは何者?

それにしても。
劉輝の涙はいつも切ない…。

早く幸せになって欲しい…。
笑顔の劉輝をまた視たいですね。
頼みますよ、雪乃先生。

そして、倒れた劉輝の異変を察知する静蘭。
さすが麗しの兄弟愛ッッ!!
ほんの数秒でしたけど、緑川さんお疲れ様です。

作画工程がタイトなようですね。
次回こそ総集編でなく本編期待します。

図説 中国文明史〈5〉魏晋南北朝―融合する文明

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